東京たち

うその日記/文章の練習

2016-01-01から1年間の記事一覧

0823

火曜日 晴れ たぬきに誘われてコーヒーを飲んだことがある。 まだ高校生のころだ。 相手がたぬきだということは一目みてわかっていたし、さほど気乗りもしなかった。 誘われたら無条件に「はい」と言いたくなるような抜けたあたまと、 なぜわざわざ見知らぬ…

0817

水曜日 晴れと雨 東京の人はつめたい、 と故郷のひとたちが口々にいうので、少しむっとする。 そういうイメージはいまだに残っているらしい。 世田谷のわたしの大家さんは、アパートの隣に建つ家に息子さんと住んでいらして、 たぶんもう90も近いのだとおも…

0816

火曜日 雨 エビの食べ過ぎで肌がほんのりピンク色になっているユイちゃんが、 「ご飯を食べよう」 というので渋谷のタイ料理屋にふたりで入った。 とうぜんのようにトムヤムクンを頼んだ。 スープをのむ前から、香りのつよい酸味が鼻にくる。 あとから結構辛…

0720

水曜日 晴れ 真夏でも布団をかぶって寝たい、 という話で、ビールをのみながら先輩と相づちを打ちあう。 ちょっとだけ、重みのようなものが乗っかっていないと、 わたしたちはうまく眠れないのだ。 はいりこんですぐの布団は、むしろひんやりとしていて気持…

0711

月曜日 晴れ こっち、と言われてゆくと、墓地に出た。 油に落ちた火がいちめんに広がるように、墓地は突然、たちあらわれた。 突然にみえたのは、それまで、ながい坂を手を引かれるままに登っていたからだった。 あのとき、幼いわたしの手をひいてくれた祖母…

0630

木曜日 曇り よく会うひとのことを考える。 よく、といってもたぶん月に一度あるかないか、 おなじ場所ですれ違うというだけだ。 わたしが気づいてないだけで、そんなひとはたくさんいるのかもしれない。 三軒茶屋にはキャロットタワーという、唯一の真っ赤…